さわやかな息が恋するふたりの距離を近づける! 〜パーソナル・スペースと口臭ケア 恋愛編〜

作法指南室

2017.10.24

ある日の口臭科学研究所。今朝は鼻歌を歌いながら、ニコニコ顔で出勤してきた若手研究員。その理由をベテラン研究員が尋ねてみると…。

ベテラン研究員
口臭科学研究所
ベテラン
研究員
若手研究員
口臭科学研究所
若手
研究員
ベテラン研究員
朝から、鼻歌なんか歌っちゃって、ずいぶんご機嫌みたいね。 何かいいことあった?
若手研究員
えへへ、わかりますか? 実は今朝、朝食を食べ損ねちゃって、研究所の前のカフェに寄ったんです。で、カウンターの席でサンドイッチを食べようとしていたら、今年の新人研究員のA子さんが店に入ってきて、「ここいいですか?」って、隣に座ったんですよ〜。前から、彼女のことは、いいなと思ってはいたのですが、彼女もボクに気があるんですかね。えへへへ。
ベテラン研究員
え〜! それは、いきなり飛躍しすぎじゃないの? 
若手研究員
いやいや、先輩。パーソナル・スペースですよ! 好意を持っていなかったら、隣の席には座らないと思うんですよ。彼女、ボクのことが…。ムフフフ。
ベテラン研究員
ふっ、甘いわね! 確かにカウンターの隣の席というのは、パーソナル・スペースでは、親しい間の距離感だけれど、女性と男性では、パーソナル・スペースの大きさが違うとされているの。一般的には、男性に比べて女性のほうが狭いのよ。つ・ま・り! 好意があるから隣に座ったのではなく、単に席が空いていただけというのも考えられるわ。
若手研究員
ええ〜、そんな〜…。
ベテラン研究員
まぁ、勘違いして、はしゃがないほうがいいわ。恋は焦らずよ。それより、口臭ケアはちゃんとしていたんでしょうね? カウンターの隣の席は、相手の息がしっかり届く距離でもあるのよ。
若手研究員
あっ! そ、それが、今朝は朝食も食べ損ねたくらいで…。歯みがきもカンタンに済ませてしまって…。ああ〜…。

親しくなるほどパーソナル・スペースは縮まる

口臭をさまざまな角度から科学する口臭科学研究所。研究所では、パーソナル・スペースと口臭の関係にも着目しています。前回の記事ではビジネスシーンにおけるパーソナル・スペースについて解説しましたが、今回は恋愛におけるパーソナル・スペースと口臭について考えてみましょう。

パーソナル・スペースとは、個人が持つ“なわばり感覚”のようなもの。人には、他人が侵入してくると不快に感じる距離というものがあります。その距離感は、相手との関係性などによって異なりますが、親しい関係なほど、その距離感は狭くなると考えられています。

パーソナル・スペースの大きさには、もちろん個人差はありますが、性別による違いも顕著。一般的には、下のイメージ図のように男性のほうが、女性よりもかなり広いとされています。

パーソナルスペースの違いパーソナルスペースの違い

パーソナル・スペースの違いが生む、男女の恋の勘違い

男女がそれぞれ自分のパーソナル・スペースを基準に考えると、ときとして誤解が生じることもあります。

女性が好意を持つ男性に近づいたら、男性がサッと席を立ってしまい「もしかして嫌われているのかも…」と思ってしまったり、また、男性の横に女性が並んで話しかけたことから、男性が「彼女は僕のことが好きなのでは」と思い込む…というのは、ありがちな話です。

しかし、どちらの男女の行動も、嫌悪や恋愛の感情からくるものではなく、単にパーソナル・スペースの違いということも。距離だけで、勘違いせずに、きちんと相手の気持ちを確かめることは大切です。

恋人同士の距離は45cm未満

アメリカの文化人類学者エドワード・T・ホールは、社会生活の中で使い分けられるパーソナル・スペースについて、密接距離(0〜45cm)、個体距離(45〜120cm)、社会距離(120〜360cm)、公共距離(360㎝以上)の4つに分類しています。

恋愛の場面で考えると、まず、相手を認識するのが「社会的距離(120〜360cm)」、そこから何人かの仲間で飲みに行ったり、遊びに行ったりの距離が「個体距離(45〜120cm)」です。これは、手を伸ばせば相手に触れることができ、相手の感情を読み取ることができる距離。友人同士の距離感ともいえます。

そして、もっと親しくなり、恋人同士となると、手をつないだり、抱きしめたり、キスをしたりといった、スキンシップが多くなり、ふたりの距離が接近。相手が近づいても不快と感じることはなく、パーソナル・スペースは「密接距離(0〜45cm)」と狭くなります。

口臭ケアで自信をつけ、恋のチャンスは逃さずに!

ふたりの距離が縮まるにつれ、気をつけたいのが口臭ケア。当研究所が行った、「息がどこまで届くか」を可視化する実験によると、ちょっと親しい関係の「個体距離(45〜120cm)」も、恋人関係の「密接距離(0〜45cm)」も、相手に確実に息が届く距離です。

相手への「好き」という気持ちが高まるにつれ、会話やスキンシップによって、コミュニケーションを深めたいと考えます。しかし、距離が近づいたことで、相手の口臭が気になることも…。好意を持っていたのに、不快感から気持ちが離れてしまうかもしれません。

口臭の発生原因の8割は、口の中に原因があるとされています。大切なのは、歯みがき、舌のケア、うがいなどの口臭ケア。これらのケアを日々の習慣にし、「きちんと口臭ケアをしているから大丈夫」という自信をつけることです。口臭ケアが恋のチャンスを逃さず、ふたりの距離をより近づけることにつながります。

恋をするとニオイに敏感になる

しかし、恋人同士になっても油断は大敵です。パーソナル・スペースの4つの距離感を提唱する、エドワード・T・ホールは、恋人同士や夫婦の距離感である「密接距離(0〜45cm )」では、相手の体温、息の音、ニオイを感じ、「嗅覚と放射熱の感覚だけとなり、そのふたつの感覚は鋭敏になる」としています。つまり、距離が密接になるほど、相手のニオイを感じやすい傾向に。だからこそ、ふたりの関係を深め、持続させるためには、口臭ケアがいっそう重要となってくるのです。

100年の恋も冷める!? モーニング・キスにご用心

ひとつ覚えていて欲しいのが、「口臭の強さは一日の中で、時間によって変動する」ということです。特に、ニオイがいちばん強くなりやすいのが起床時。睡眠時は唾液の分泌が少なくなるため、口の中で細菌が繁殖しやすくなります。そのために、起床時は口臭が強くにおう場合があり、起床時の口臭は「モーニング・ブレス」と呼ばれています。

恋人同士になり、ふたりで朝を迎えたとしても「おはよう」のキスは歯みがきの後で。せっかく盛り上がる恋のムードを、口臭で台無しにしないように気をつけてください。

よりよい関係を長続きさせるためにも、口臭ケアを習慣に!

恋人同士や夫婦の関係は、距離が近いからこそ、いつも緊張していては、疲れてしまいます。ときにはだらしない恰好で過ごしたり、女性ならすっぴんの顔を見せたり、くだけた会話をし、たまにはケンカも…。リラックスして、お互いが気を許し合う関係というのがいいですよね。

でも、口臭は別と考えましょう。ニオイは遮断しにくく、感覚にダイレクトに訴えかけ、不快感につながりやすいものです。自分では気がつきにくく、相手も指摘しにくい問題。なんとなく気まずくなったり、口臭がふたりの仲に影響を及ぼすことは十分に考えられます。

親しき仲にも口臭ケアあり!近い距離感だからこそ、相手を思いやる気持ちと、毎日の口臭ケアを忘れずにいたいですね。

●参考
  • 渋谷昌三著 新講社『「人との距離感 」が上手い人 下手な人』
  • 渋谷昌三著 NHKブックス『人と人との快適距離感 パーソナルスペースとは何か』
  • エドワード・ホール みすず書房『かくれた次元』

あわせて読みたい記事

あわせて読みたい記事

おすすめ記事